KOMA NOTE

”軽やかにシンプルに生きていく”考え方や実践をフリーランスの人材育成クリエイターがつづります。

スキルを学ぶ、その前に。

数年前、休日に突然田舎から両親が大阪の我が家に駆けつけたことがあった。ちょうど桜の綺麗な季節だった。上京の理由を明かさず、神妙な顔つきで「正直に言いなさい。」と僕に迫った。一体何のことやら検討もつかず、「何?」「いやいやもういいから話しなさい」軽く押し問答のようなやり取りのあと、ようやく事情が判明した。

 

実家に、「オレ」と名乗る人物から「お金を用立ててほしい」と数回電話があった。

 

つまり、詐欺だ。そんな大金用意できないものの、息子が困っているのは「確か」だから、とにかく大阪までスッ飛んできた、という。どうやら僕がある事業に失敗して、すぐにでも500万円を用意しないといけない、そして自分の家族には迷惑をかけたくないから妻には内緒にしてほしい。そんな作り話だった。

それは完全な詐欺だよ、と僕じゃないことを伝えるが、なかなか魔法は解けないことに正直驚いた。

母は言った。たとえ風邪気味の(オレ)声であろうが、自分のお腹を痛めて産んだ子の声を間違うはずがないじゃない、と。(いえ、しっかり間違っていたのですが・・・)

 

ようやく魔法が解けた途端、両親はなにかの鎖が外れたかのごとくその場にへたり込んだ。心底疲れ切っていた。

僕のなかで日頃コミュニケーションをさぼっていたことでこんな心配をかけてしまったことの申し訳なさ(当時、携帯番号が変わったことすら伝えていなかった)。仕事の忙しさを言い訳にして帰省していなかったこと。そして親の良心を逆手にとった詐欺をしかけてきた連中への憤りが湧き上がり、心の中は反省と憤りで複雑だった。

しかし、そもそも両親にお金がなかったことですぐに振り込めずに、会いにきてくれたことが何よりの幸いだった。

 

以来、これは帰省した際の恒例の笑い話になっている。

 

この話で今回ポイントにしたいことは、この詐欺集団が老いた母と電話でしたやりとりに、きめ細かい「聴く技術」が盛り込まれていたこと。近年顧客企業から要望を頂き、特に管理職の方々によくトレーニングしている「アクティブリスニング」「フィードバック」等の技術が駆使されていた。昔の和牛商法や未公開株詐欺まで、あやしげな人たちは心理的な盲点を利用した巧みなコミュニケーションスキルを駆使して近づいてくる。

僕は思う。そのスキルを使う「場所」と「相手」、ち・が・う・だろ〜!この••ゲー!と。

 

翻って僕が仕事でこういったスキルトレーニングをする際、いつも1つの問いを相手に投げかける。

「あなたはこのスキルを、誰のために、何のために使うのか?」

 

腹に落ちるような定義と理由をハッキリしておかないまま我欲のまま乱用すると、必ず誰かを傷つける。もしくは使う場と相手がぼんやりしているが故、せっかく手にしても錆びついて終わる。

 

ちなみに僕だったら、スキルをこう定義している。

「自分にとって大切な人の豊かさを増やし、守る道具」

(どこかの投資信託のキャッチフレーズのようなだが、、、)

 

ビジネススキルを学ぶのは大いに結構だし、あなたの年代は貪欲に自己投資することが大切だ。

その前提として、スキルとは何か?なぜ、自分はそれを学ぶのか?を自分の言葉でアウトプットしておく癖を身につけたい。ほとんどの方はそれをしない。だから迷い、疑う。そして情報爆発社会の波にのみ込まれてぶくぶくの知識メタボになっていく。

 

定義と理由。

シンプルにいつもこの2つを決めよう。

そして、手にしたスキルは人の喜びにつながる活かし方を。

ご参考までに。