あいまいな記憶より、1枚の記録。
クライアントのO社長は頭の回転が早く、毎朝のミーティングで社員に的確な判断で指示を出す。
しかし、何人かの社員は指示どうり動かない・・・。
あるいは動くけど間違える。解釈がズレる。
よく言われる「伝える」けど「(真意が)伝わっていない」状態の悩み。
これは小規模企業経営者の切実な悩みのひとつといえます。
そんな社長のために、私が手にした1冊の書籍。
「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」
アトゥール・ガワンデさんというハーバード大学医科大学院准教授の方が書かれた本です。ノウハウ書ではなく、淡々とプロフェッショナルたちがチェックリストをどう生かしてトラブルを未然に防いでいるのか、を書いています。
私が社長に手渡したいこの書籍の1エッセンスとは、
「あいまいな記憶ではなく、たしかな記録に頼ることこそプロの仕事」です。
社長の話をメモしない社員を放置せず、記録することを当たり前に。そして、解釈がずれないよう、社員が職場にある1枚のホワイトボードに優先順位を整理してまとめる。それを社長と社員が常に確認しながら動く。
たったこれだけ?これって子供じみたアクションだとお思いでしょうか?
上記の書籍によると、人命のかかった医療現場、建築現場、パイロットなど多くの分野のプロフェッショナルほど、実は「1枚のチェックリスト」を当たり前のように使っている事実が明らかにされています。
なぜチェックリストなのか?2つの理由から説明されています。
①人間の記憶力、注意力の危うさ。切羽詰まった状況になると、人は当たり前のことでも忘れがちになる。
②手順を省く誘惑。毎回すべての手順をこなさずとも問題は起こっていないといいたくなる。しかし、いつかきっと問題は起こる。
多数の事例が紹介されていますが、中でもロックバンド、ヴァン・ヘイレンのボーカルを務めるデイビッド・リー・ロスの逸話は興味深い。彼も地方巡業をする際に、関係者との間で毎回チェックリストを使っていたのです。
そのリストのひとつとは・・・
楽屋にボウルいっぱいのM&M'sチョコレートを用意すること。ただし、茶色のM&M’sはすべて取り除いておくこと。
一見有名人のわがままに聞こえる内容だが、実は見事な方策なのです。
デイビッドは言います。「もしも、楽屋で茶色いM&M'sを見つけたら、すべての機材や会場設営を見直すんだ。すると必ず問題が見つかる」
ヴァンヘイレンは、地方の巡業に初めて巨大セットを持ち込んだ初めてのバンドだったそう。重量のある機材を大型トラック9台で運ぶ。当然搬入時のミスや会場とのトラブルも起こりやすい。それは同時に命に関わることでもあったのだ。
機材や関わる人数が多い仕事だからこそ、再現性のあるチェックリストが必須だったのだろう。
***
チェックリストという型を使うことで、よりよい判断や重要なものの見逃しを防くことにつながります。百戦錬磨のプロたちですらチェックリストを使うのに、翻ってまったく使っていない、その発想すらないという会社は多いような気がします。使わない手はありません。
「1枚のチェックリスト」。実行して成果につなげるには、3つポイントがあります。
1.短く簡潔か
大きな見やすい文字で数行に整理されているリストであること。
2.実用的か
手のひらサイズか、関係者全員が一目でわかるような大きな1枚であること。
3.訓練できるか
チェックリストを基にした指導、フィードバックを繰り返すこと。
社長の指示を的確に理解し、社員が即行動を起こすには?
いろいろな「研修」を検討することよりも、今日からシンプルな1枚チェックリストという「ツール」を取り入れてみることで現実が変わるのかもしれません。
”あいまいな記憶に頼るな、記録に頼れ!”
どうぞご参考までに。
今日も笑顔を忘れずに。
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
- 作者: アトゥールガワンデ,吉田竜
- 出版社/メーカー: 晋遊舎
- 発売日: 2011/06/18
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