時に助けてと書けるメモがあってもいい。
今も企業が欲しい研修テーマは、大雑把にいえば「攻め」のスキル
ロジカルシンキング、交渉スキル、プレゼンテーション・・・
企業というのは、常に高い目標を掲げて立ち止まるわけにいかない宿命であり、マグロのごとく生きなければなりません。
当然、社員にも「攻めの構えと武器」を持たせ、強化することになります。
筆者も「メモ」という切り口から、そのニーズに応えるべく大人の攻撃力を倍増させるお手伝いをしています。
しかし、以前ある公開講座に参加していたある一人の参加者(女性)を通じて、現代社会に潜む落とし穴とメモのもうひとつの役割に気づくことができました。
今日はそのエピソードを。
彼女の暗い表情のわけ
その講座は「ロジカルプレゼンテーション」というテーマでした。
(ロジカルでもプレゼンでも筆者の場合は、メモ力を土台とします)
いつものようにややウケしながら、楽しく講座を進行していました。
ふと、一人だけ終始うつむき、くら〜い表情のまま参加している女性に気づいたのです。気づいてしまうとずっーと気になります。
体調がすぐれないのかな、内容が求めていることと違うのかな、少し話を聞いてみようと休憩時に話しかけたのです。
彼女は「はい、大丈夫です。」と言うだけでした。ますます気になる・・・
すると講座終了時、筆者に寄ってきて”ある事情”を話してくれたのです。
それは、職場で同性のベテランのある方からイジメにあっているという話でした。
筆者は聞きました。
「誰かに相談したのですか?」
「いいえ。もともと話すのが苦手だし、どこからどう話していいのかわからない。毎日職場では我慢し、家に帰って泣いている。」
かなり予想外の重さです。
講座直後の立ち話レベルではありません。
さっきまでギャグを放っていた筆者の軽さがますます浮き彫りになっていたことは言うまでもありません。
それはどうでもよいのですが。
どうやらイジメを受けているのは事実だとしても、実際上司にそれを伝えるとなると、難しいのだそうです。
多分に自分の主観かもしれない。
相手はそう思っていないのかもしれない。
えっ私の被害妄想?嫌いだからそう思うだけ?・・・
いい大人だし・・・
今日も黙っておこうか、と。
何より、相当な勇気とプレゼン力を必要とするということです。
仮に上司に伝えられたとして、その後どうなるのか、Badな展開だって想定されます。
ただただ辛い日常を耐えていた。
それが彼女の暗い表情のワケだったのです。
筆者がアドバイスした2つのこと
「なぜこの話を初めて会った私に?」
筆者は聞いてみました。
「メモで人生が変わった、という先生の話を聞いて何か助言をもらえるかもと思いました。」と。
たしかに、メモ力は大きく自分の攻撃力を高める武器でもあるけど、自分を守るためのツールにもなる、そんなライフスキルです、と自身の経験も踏まえて伝えていました。
ならば、ここで何か手渡せるとしたら「メモ」を活かす方法しかありません。
筆者はこのように、とおすすめしました。
①”ある型”にそって思いつくままイジメに遭っている事実中心で一枚の紙に書く。
②上司に面談時間をもらい、紙を机に広げて、見せながら、指差しして、ただ読む。
以上、これだけ。
「できそう?」「・・・やってみます。」
2週間後、2回目の講座で彼女にお会いしました。
表情は晴れ晴れしていました。(おおぉよかった!)
アドバイス通りにやってみたのだそうです。
まず自宅で事実をひたすらメモしていった。
すると気持ちが落ち着いてきた。
上司を前にしてかなり緊張はした。
でも紙を広げて見てもらえればいいと思うと、気が楽になった。
そう言ってくれました。
彼女の上司。
まず紙に書かれた事実を目にした。
指差しされた言葉を追い、彼女の口頭でも聞いた。
事態に驚きながらも状況を把握し、すぐに対処してくれたそうです。
そして「こんなわかりやすい説明をしてくれてありがとう」と感謝されたそうです。
自分を守るために書くメモだっていい
多くの人は、「伝えるのが苦手だ」と言います。
筆者は、こう言いたいのです。
「一枚のメモをつくればいいよ」と。
もし何かに悩んでいる、うまく相談ができなくて苦しんでいる人がいたらまずはその辺の裏紙でいいので思うがまま書き出してみてください。
時に「助けて」この一言を書いてもいい。
メモはどこまでも自由なのです。
順序や誤字脱字、文法など一切気にせず、ありのまま吐き出すように書き出す。
それだけでも、随分気持ちは楽になると思います。
メモは、意外と自分を立て直します。
現代社会におけるメモのもう一つの役割とは?
「大切な自分を守るツール。」
そう筆者は捉えています。
現代社会はこれまで「攻めて攻めて、追いつけ追い越せ、まだまだ」の精神でここまでの繁栄を築いてきました。
こうやってのんきにブログを書いていられるのも24時間働いてきた先人たちのおかげです。
一方で、攻め攻めの空気に馴染めなくて、いわゆる落ちこぼれる人たちも大勢作られました。どこまでやっても何をやってもまだまだダメと言われる。
そうなると人は無力感におそわれ、生きる自信がなくなっていきます。
攻めもあれば、守りも必要です。
特に今の日本には。
たかがメモかもしれません。
されど、メモには攻めの思考力強化だけでなく、大切な自分自身を守り、人生をケアする、誰かにSOSを出せる最も身近なツールにだってなりえるのです。
伝えるのが苦手な人でも、メモがあれば見せればいいのです。
筆者はもっともっとその活かし方を研究し、子供から大人まで多くの方に手渡していきたいと思います。
*子を持つ親として、野田市で起きた小4の子の事件は非常に胸を痛めます。
できることなら野田市に行って助けてあげたかった。。(本心から)
大人は目を覚まさなければなりませんね。