KOMA NOTE

”軽やかにシンプルに生きていく”考え方や実践をフリーランスの人材育成クリエイターがつづります。

承認よりスマホを充電できる場所。

東京での仕事に向かう新幹線の中で、読んだ一冊。
自分と関係のないアンダーグラウンドな話ではなく、もはや隣の日常であることに軽いめまいと、日本という国に実在する「いびつな共助」という決して肯定はしないけど、簡単に否定もできないリアルな課題を本書は優しく突きつけてきます。

 

 

最近、いわゆる巷のビジネス書の類を手にすることがめっきり減った。
その理由は、あまり役に立たないからである。
もちろん、若い頃はそれこそ何百冊とお世話になり、中にはボロボロになるまで読み込み心や仕事の支えになったものもある。

 

ビジネス書というのは、要は「正論集」。
だから読んでいてスッキリするが、深みは少ない。

世の中は白黒はっきりすることは少ない。
ほとんどがグレーゾーン。その中に僕らの仕事や暮らしがある。
何かと整った企業で働いている時は、きれいごとや理想、正義、常識といった正論が役にたつことが多かった。それが通用する環境だった。

今、独立して中小零細企業のサポートをしながら直面するのは、ずばり正論が通じないこと。

あなたにとっての正論は、わたしあるいはわたし達にとっては正論じゃない。
非合理。非論理的。こんなことが日々たくさんある。
誤解を恐れずに言えば、合理より情理の影響力がものすごい。

そういった世界をひとつひとつ紐解きながら「正解」ではなく「納得解」を紡ぎ出していくには、自分の代わりに経験したことを事実としてまとめてくれるルポタージュや、人の気持ちのひだや裏側を自分にはない言語で表現してくれる小説がなかなか役に立つテキストだ。

さて、今回のタイトル。
いわゆる派遣型リフレで生きている彼女たちが一番欲しがっているものとは何か?
それは承認や温かい関係性よりも欲しいもの。

スマホを充電できる場所なんだそうだ。
今やライフラインであり一番大事な拠り所、それがスマホということだ。

本書ではなぜ若い女性が自分自身を売る仕事をするのか、その背景や気持ちが1次情報として次々とレポートされる。

一見自分とは遠く関係のない話のように思えるが、これらの世界に山積みになっている課題を、他人事ではなく、自分ごとに引き寄せて捉え直してみたくなる。

自分に引き寄せて思考してみるリテラシーは、複雑性で不透明で不条理さが増している社会を生きるぼくたちの、必要不可欠な武器になるのではないか、そう感じる。

 

決して読後感に清涼さはない。むしろ胸のあたりがドーンと重くなる(笑)。
でも、あなたにはおすすめしたい一冊なのだ。