負けから未来を見る夏。
僕の祖先にはかつての太平洋戦争で命を亡くした人がいる。
だから毎年、夏がやってくると僕は先人たちの命を通して学び直すことにしている。
1冊の本を紹介したい。
「敗戦真相記」。出版されたのは2002年。著者は永野護という御仁。
あの渋沢栄一の秘書をした後、実業家として数々の企業を成功に導き、政治家としても才能を発揮し第2次岸信介内閣の運輸大臣をするなど政財界で活躍したという常人ではない方。永野兄弟と言われる他の兄弟も猛者ぞろい。
「なぜ日本は戦争に敗れたのか」。
本書はこの単純な命題に様々な角度から冷静に答えていった講演の原稿録である。
とにかく1ページ目から説得力と分かりやすさが他の類似本を圧倒している。
2時間もあれば一気に最後まで読める分量だ。
一部を紹介しよう。
敗戦の最も根本的な原因とは何か?
「それは、日本の国策の基本的理念が間違っていたから。」
(だって言行一致してなかったよね、ぶっちゃけ。)
永野さんは言い切る。()内の上記の表現は僕が勝手に置き換えています。
衝撃なのは、上記の言説を説いたのが、なんと昭和20年9月なのだ。
終戦はご存知8月。その直後になんと広島で行った講演なのだ。
想像するに見渡す限り何もない焼け野原、多くの人命が失われ、最も未来と希望が感じられなかったであろう絶望のタイミングに語った内容。
一夜にして日本の価値観が真逆になったあの時期に、これほど端的かつ具体的な事例を用いながら敗戦をグイグイ語るなんて、、、そこまで言って委員会状態なのだ。
驚くべきは永野さんが語る内容は、終戦70年経ったいまの日本にそのまま当てはまる。現在の多くの企業組織にも恐ろしいほど当てはまるのだ。
ズバズバ当たっていて怖いくらい。
一体何者なんだ、永野さん!
永野さんは妥協することなく努めて冷静に敗戦の原因と将来への予言を語るわけだが、最後にこう締めくくっています。
「オレいろいろ言ったけどさ、でも、これからの日本はもっといい国になっていくはず。未来の皆さん、期待してるぜ〜、な!」(もちろん本書はこんな表現はせず、ガチガチの漢語表現です)
1945年9月の先人のエールに、2016年の未来の私は背中を叩かれながら情けなく感じてしまう気持ちもあるのだが、最後には何か不思議な気力が湧いてくるのです。
いつの時代においても、国も組織も基本は人づくり。
読むたびに「シャー!やってやろう」と思います。
今マネジメントに悩んでいる経営者や管理職の方、プロジェクトが思うように進まなくてくじけそうになっている担当実務者のあなたに、僕がこの夏オススメしたい1冊です。